引き寄せの法則は、存在するのか
あなたは、『引き寄せの法則』を信じるだろうか。人間の思考には波動があり、その波動に宇宙が共鳴して、現実に影響を与える。だから、「頭で想像したものが、現実に創造される」というロマンある理論だ。2006年に『The Secret』の初版が発売されて以来、世界中で多くの人の心をつかみ、それを信じている人は少なくはない。
真偽はわからない。科学的に証明されている理論ではないため、懐疑的に考える人もいる。むしろ、信じていない人の方が多いのかもしれない。それでも私たちは、『願う』という行為そのものは、ごく自然に受け入れている。神社で願掛けをする。手を合わせて安寧を祈る。流れ星を見つけて願いを唱える。世界を見渡しても、人は太古から何かへ祈り、何かを願い続けてきた。
願いには、一体どんな意味があるのだろう。私の願いは、どこかの世界に働きかけ、何かしらの影響を与えるのだろうか。この『願い』ということについて、二十歳のころ、エジプトで聞いたある話が、今でも私の中に残っている。
サハラ砂漠で、星に願いを
大学生のころ、私はエジプトで、サハラ砂漠のキャンプ・ツアーに参加していた。そこは視界が広く、雲ひとつないため、陽が落ちると満天の星空が広がるのだ。日本では滅多にみれない流れ星も、ここでは、雪の中のカラスを探すくらい簡単に見つけられる。せっかくの機会なので、私はここぞとばかりに、星に願いを込めることにした。
流れ星を見つけるたびに、指をさしながら、「金持ちにしたまえ」とか、「モテモテにしたまえ」と、頭に浮かぶ願いをひとつずつ唱えてみた。様子をみかねたアラブの案内人が、何をしているんだ、と尋ねてきたので、私は事情を説明した。日本では、流れ星に願えば、叶うと教わるんだ。そういうわけで、僕はもうじき成功者になるんだと。しかし彼は、まるで小さな子どもを諭すみたいな口調で、呆れたようにこう話した。
「星に願いを」とは、君が考えるような都合がいい話ではないんだ。おそらく人から人へ伝わるなかで、徐々に形が変わってしまったのだろう。もしも君が、心の底から金持ちになりたいなら、常に願い続けなければいけないんだ。「金持ちになりたい、金持ちになりたい、金持ちになりたいんだ」ってね。そうすれば、何気なく空を見上げ、ふと流れ星を目にした瞬間にも、金持ちになっている自分を想像しているはずだ。つまり、僕が言いたいのは、「みてから願い始める」では駄目なんだ。「願っていたら流れ星が見えた」というのが、エジプトの源流的解釈なんだ。
叶わない願いと、叶う願い
エジプトの案内人の言うとおりだった。私の気まぐれな願いなど、翌日にはすぐに忘れてしまった。私の頭は、ピザを食べたいという次の願いに向かっていた。本当に叶えたいことなら、朝起きたときからそれを考えているはずだ。食事をしているときも、車を運転しているときも、眠る前にも、頭のどこかにそれがある。叶うべき願いとは、一瞬の思いつきではなく、日々心に住み続けるものなのかもしれない。
引き寄せの法則のように、思考の波動に、宇宙が呼応するのか、それは私には解らない。しかし、有っても無くても確かなことはある。流れ星が降るその瞬間に、忘れないような強い願いをもっているなら、私の目には、それに繋がるものばかりが映るはずだ。関係する本があれば手に取り、可能性がある人に連絡を取る。それを得るためなら、どんな努力もできるだろう。それほど強く願うことができるなら、結果として、引き寄せの法則のように、願いは叶うのかもしれない。